ダディ・ロング・レッグズ大阪 三戦参戦!!(※3/28夜追記)

いや~舞台ってほんっとうに面白いですね。

物を感じる力が年々鈍くなっていって、
なにかにドはまりするエネルギーや集中力も知らぬ間に摩耗していき、
かつて確かに自分が出会ったはずの感覚を思い出して、
ああもうあんな風に強烈に、熱烈に、激烈に何かを感じることはないのかもしれない。
そう思いかけていた今日この頃でしたが、

まあ戯けた感傷でした。

「戯ける」漢字の戯けた感半端ないですね。
鳥獣戯画の兎に猿に蛙が脳内で舞い踊りますよ。
アンニュイとはこういうことか、ってほんまになあにがアンニュイじゃ鏡で自分の顔を見るがいい。
久々に自分で引くくらいドはまりして、正直若干引いてるんだけど、
あ、まだイケるんじゃん! という嬉しさが大きい。
なにがこんなにツボったんだろうと考えてみたりするのはもう少し落ち着いてからにします。まだ時期じゃない。
びりびりきた衝動のままにとにかく見ずにはいられない、となったの8年前にレミゼの大阪公演があったとき以来です。
激務の合間を縫ってよろよろしながら劇場に通い詰める私に友人がドン引きしていた思い出(ひどいな)。
でもあの時を乗り越えられたのは週一のレミゼのおかげだったと今でも思う。

という長々しき前置きと自分語りをしたのは、以下から始める感想文を前にした注意書きのようなものです。
ここでやばいものを感じた方は引き返してくださいね。
久々に燃え転がって萌え転がって吐き出さないと苦しいレベル。

ダディ・ロング・レッグズ大阪公演は3/25~3/27の三日間。
カレンダー通りの休日の会社員には蒼白必至の平日オンリー。しかも年度末で阿鼻叫喚の方も多いはず。
25日ソワレ、26日マチネ・ソワレ、27日マチネの全四回。
東京で一目観劇したあの日からなにかが私の中に宿り、込み上げる衝動に理性は消えてなくなり、
執念が呼び寄せたかただの幸運か有給取得に成功し、
公演表にらめっこして25日ソワレと26日マチソワ行ってきました。
もうこれから先二ヶ月お茶漬けでもいいわ。
小躍り。欣喜雀躍。
うそ。大踊り。
気持ち的には欣喜鷹躍。そんな言葉ないけどないなら作ればいいじゃない!
鷹って踊るんかな。
検索かけたらモンゴル相撲の鷹の舞が出てきた。そんな感じでもいいわ。
いや、鷹の舞と言えばフライ,ダディ,フライの岡田君じゃん。ダディつながり!
あんなに美しい舞は無理だわ。
狂喜乱舞。
ちょっと水飲んで落ち着こう。もうすでに息切れしてきた。

そんな感じの、自分用レポ覚書感想妄想語り入り乱れです。
長いです。

基本ストーリーと感想は二つ前のブログに書いたので、それを念頭に。

東京で観劇してから三週間弱?
同じ舞台を何度も見るなんてと言われることもありますが、
生身の人が作り上げ、見ている人々の感情が溢れる舞台が日毎にどれほど違う色や温度をしているのか。
Wキャストやトリプルキャストの多いレ・ミゼラブルに何度も通うことでその楽しさを知った私ですが、
同じキャストで公演される演者お二人だけの舞台は、
東京で観た時よりももっともっと二人の関係が密になり、
会話のテンポも動きのコミカルさも放たれる感情の温度も、ずっとずっと鮮やかになっているように感じました。
これって見ている私の感情フィルター効果も大きいんでしょうけど、
でももっと素直に単純に、ジルーシャとジャーヴィスという人たちの喜怒哀楽が更に深くなっていっている感じを受けました。
前よりもっと「彼らになっている」、と言えばいいのか。
演じている間に深まっていくものがあるならば、その感情の変遷についてお二人に伺ってみたい。

もちろん、ジルーシャに寄ってストーリーを追ってしまうんだけど、
後々考えてしまうのはジャーヴィスについてでした。
舞台でその姿が行間からすっかり現れ、明確な肉付けがされたおかげで、彼の心情を思わずにはいられない。
だからこそ、この舞台がより一層響いたんだろうなあ。

百人ものみなしごたちがひしめき合う孤児院で一番年上のみなしごとして生きてきたジルーシャは、
若き慈善家ジャーヴィスの恩恵を受けて、
自由への唯一の扉であった想像力という才能を胸に、大学生活を経てどんどん花開いていく。

彼女が初めて大学で与えられた一人部屋に座り、
「私、ジルーシャ・アボットのことを好きになれそうだわ」と手紙に書く場面。
何気ない場面なんでしょうけど、あの場面がすごく好きで。
百人のこどもたちの世話係として自分を顧みることもできずに生きてきた少女が、遂に「自分」を手に入れられそうだと希望と喜びを綴る。
子供の間は、基本的には自分のことだけ考えて生きていけるはずなんですよね。
それがジルーシャにはなかった。
皆が当たり前に享受してきたものを得て全身で喜ぶあの冒頭で、まず彼女が愛おしくなる。
それを書くなら、「この人生で、初めて私を見てくれる人が現れた!」と、ダディ・ロング・レッグズのことばかり考えているジルーシャもぎゅっとしたくなるくらい愛しいんですが。
この刷り込みというか、この時点でのジルーシャにとっての「ダディ」の神様感は凄いと思います。
自由を与えてくれた解放者であり、本当は想像することもできない家族であり、やさしさをくれる友人であり。

皆が当たり前に享受してきたものが自分にはないの、と学生生活が始まってすぐに気付くジルーシャの叫びを聞きながら、
私はそれらを当たり前に享受してきたんだなとぼんやり思いました。
成長過程で与えられる何気ないすべてが、ジルーシャにとっては得られなかったもので、
箸が転がってもおかしい時期の女の子が「皆の共通の話題が理解できないから休憩時間が一番困るの」、と口ごもる姿や戸惑う姿に切なくなる。
でもだからこそ追いついてみせる、と力強く叫ぶジルーシャの目の光に引き寄せられるんだろうな。
彼女の感情は素直で、シンプルで、嫌味がない。
ほかの女の子たちのようになりたい、と真っ直ぐ手をかざして願う。
ジルーシャの内側は言うなれば砂漠で、目の前に差し出された自由と教育と書物の山(想像)は慈雨と表現するにはやさしすぎるか。もっと激しく、貪欲に、自ら雨雲に手を伸ばし食らいつく勢いで自分の内の渇きを満たそうとする。
一年生の頃のジルーシャからは、そういう意味で本当に新しい世界への喜びが強く感じられる気がする。
だから、クリスマスに「誰かを愛さずにはいられないんですもの」と、ダディに「愛を送ります」と綴ったジルーシャは、彼女がなりたかった「普通の子」に確実に近づいていってる。
それまで、きっとそんなこと考えもしなかったはず。
新しい生活と世界に少しずつ慣れて、「ジルーシャ・アボット」と知り合い、それから再びその視線が外に向けられる。
彼女が誰かを愛することの準備ができたクリスマスは、だからとても満たされた気持ちになる。

それを渡されたダディことジャーヴィスの動揺は面白いんだけど。
彼、初めて手紙を受け取り読むところ、本当に報告書を読む感じで、
毛色の変わった動物を手に入れたからちょっと楽しみ、くらいの印象しか受けない。
声も低くて、いやに厳めしい。
愛の意味は書物から知るもの。自分の愛は、チャンスを与えるその行為のこと。
投資対象が不動産ではなく人間だというそれだけ。
だから、ジルーシャの綴る愛はなんだか理解不能で、とにかく、よく分からないし、分かり得ない。
分かり得ない――分かることができない、って随分自分から切り離した表現だなと思ったけど、
ジルーシャの贈る「愛」が自分が知るものとは「違うもの」って、本当は理解してるってことだよな。
そう考えたら、あの動揺の仕方は、なにか想像もしていなかったものを手渡された怖れにも見える。

彼が基本的には誠実な紳士であることは、その後、正体を明かさねばと苦悩し始めることで知らされる。
あの大きな体が、一生懸命文字を綴るあまり猫背になっていくところによく表れていると思います。かわいいんですよ。
声質が明らかに変わり始めるよね。
動揺と焦りと罪悪感から素の声が出始めて、あああもうなんだってこんなことに! て、なりながらも、
いやもう彼女俺のこと九十過ぎのじいさんだと勝手に思ってるわけだし、今正体明かす必要なくね?
むしろ「俺」で会いに行けばいいじゃん!
て、にやりとするところは完全に面白いこと思いついた若者の顔で、目に光が入り始めた感じ。

ジルーシャがぐんぐん花開いていくのは疑いもないんだけど、
ジャーヴィスの開花、或いは一人の人としての蘇生具合も凄まじい。
バンカーズランプの緑色がデスクを照らす、天井まである書棚に囲まれた薄暗い部屋。
一族の変わり者ジャーヴィスの静かな彼の城に、ジルーシャからの「想像力の働く」手紙が一枚一枚増えていく。
紙の白が書棚に並んでいくことで、部屋が明るくなっていくような感じがして。
時間の経過と、怖れずに想像するならば、ジャーヴィス自身の変化をも感じられる。
ジルーシャの書く面白い手紙に夢中になって約束の時間に遅れてみたり(あれ、結局ドタキャンしたんじゃないかと思うんだよね。なんの約束か知らないけど、あの手紙の後じゃ心弾んで厳めしい顔取り繕うのも一苦労だよ)、
ジルーシャに会いに大学に行ってうきうきしてみたり。
初対面でジルーシャに「はしゃいで笑いすぎた自分を恥じて、年相応という殻に閉じこもってしまう」ところまで見抜かれてしまうのは、ジルーシャの観察眼が鋭いのか、ジャーヴィスの心の緩みなのか。
会いに行った翌日にチョコレートがジルーシャとジュリア(姪)とサリー(ジルーシャの大好きな友達)に届くようにするところには、しかし彼の大人としての卒のなさを感じる。
この辺のバランスがちょいちょいおいしい。
ジルーシャがダディに報告する「自分」について、盗み読みみたいだけど、でも誘惑に抗えない、と手紙に手を伸ばしてしまう。
初めて遭遇した男性であるジャーヴィスについて語りながら、
でもジルーシャは同時にダディのことばっかり考えてるんだよね。
大学を案内したいし、本についてお話ししたいし、ジャーヴィスとしたみたいに、腕を組んで歩きたいです、って。
容姿について訊いたけれど、目の色は何色か知りたいです、って。
これ今書きながら思ったけど、会いたい会いたい会いたいって完全にラブレターだわ。
最後に、生まれて初めて書くラブレターのはずなのにどうして上手に書けるのって歌うけど、
ずーーーーーーっと書いてたんだ。
ジャーヴィスと会って、生身の男性を近くに感じたからこそ、より一層思うことがあったんだろうな。
しかし天秤が完全にダディ>ジャーヴィス。
私のことを本当に知っているのはあなただけ、と書かれることへの優越感と、それをダディとして受け止める余裕がこの頃のジャーヴィスにはあったはず。

夏休みに孤児院に連れ戻されそうになっているジルーシャを、
ダディ・ロング・レッグズの秘書役まで自演して
自分は(恐らくは)何年も訪ねていないロックウィロー農場に招待するところ。
完全にみなしごに施しとチャンスを与える慈善家の枠を超えてしまっているのに、ちっとも自覚がない。
生まれて初めての農場での日々を楽しむジルーシャと、それを見守るジャーヴィス。

朝から失敗続きでいいことがひとつもないジルーシャに、この子本当に芯が強いな、と感服してしまうのはこの言葉。
「困難や悲劇は勇気さえあれば乗り越えられる」
「人がその本質(性質だったかな)を求められるのは、日常の些細な困難にどう対処するかなのよ」
からの、
「幸せの秘密は、瞬く間に過ぎゆく今を精一杯生きること」
18か19の子がこんなこと言うんだもの。参るよ。
勇気さえあれば乗り越えられるって言い切ることのできる強さは若さか、彼女が知っていることなのか。
なんかこれは、個人的にぐるぐる考えてしまうわ。

けれど、一番最初。
月に一回の視察で理事さんたちが孤児院に大勢やって来て、大変で憂鬱で完璧に嫌な日だったけど、
最後に孤児院を出て行った理事さんに迎えの車のライトが当たって、
その影がひょろひょろ長いあしながぐも(ダディ・ロング・レッグズ)みたいで、おかしくて笑っちゃったって。
最初からジルーシャって、ちょっとした小さなことを拾い上げて楽しむ感性を持ってる。
「今」を楽しむ力。それを見つける力って、ある意味才能だ。

農場で、一日中嫌なことだらけで凹んで最悪な気持ちだったけど、
本物のダディ・ロング・レッグズを見つけて幸せを感じるジルーシャってなんて素敵な女の子なんだろう。
そこにダディの姿を思ったからだろうけど、
ジャーヴィスじゃなくたって惚れるわ。
少なくとも私はめろめろだよ。
「足を一本つまんでそうっと窓の外に放してやると、スイカズラの葉の陰に消えていきました」
ここのジャーヴィスの声がやさしくてね。
クモを放すジルーシャの表情が満ち足りていて本当に嬉しそうで、
午後の穏やかな日差し、あしながぐも(脳内でふんわりモザイク処理、もしくはかなり美化抽象化)、白い花をつけたスイカズラと青々しい緑の葉の美しい幻影を見ましたよ。
きっとジャーヴィスも同じ景色を見たはず。
いや、むしろあの人ロックウィロー農場のこと知ってるわけだから私の想像なんかより完璧に完全な図を描けるんだ。
なんか腹立つわ。ずるい。
今は優越感に浸るがいいわ。

その後、ジャーヴィス改め、ジャーヴィー坊ちゃんの幼少期の宝箱がジルーシャによって発掘されるわけですが、
「この本がほっつき歩いていたら、横っ面をひっぱたいてジャーヴィス・ペンドルトンに送り返されたし」
と書かれた彼の冒険小説に、明るくてウィットに富んだ愉快な少年の影が見えるよな気がするんだけど、
気のせいじゃないよね。
十一で母親を亡くしたジャーヴィー坊ちゃんが、その後どんな人生を歩んで、
あんな厳めしい殻をかぶる大人になったんだろうなーと思ったわけです。
ジャーヴィスがロックウィローと大きく関係していたことに驚きながら、
やはり変わらずまだ見ぬダディを想像し、どんな人かしらと思い描くジルーシャと、
私は君が思うような男じゃないんだよ、と苦悩を滲ませるジャーヴィスの声が重なる、とても美しい夏の終わり。
二人の一年目の終わり。

大学二年生になって、恐らくは他の普通の女の子たちに追いつき、自信と輝きに満ち溢れたジルーシャの美しいこと。
長い脚をデスクに投げ出し手紙を含み笑いで読むジャーヴィスが、
「もし私たち女性が権利を手に入れたら、あなたがた男性は女性にすべての権利を奪われないように注意することね」
と言われて、おもむろに居住まいを正すところ好き。
ジルーシャの勢いに押されてる感抜群。
学校での勉強も進み、幾何のながーい定理をジルーシャが一息に言うところ。
おおお、と客席からざわめきが起こり、拍手!
この時のジルーシャのちょっと顎を反らしたどや顔(かわいい)と、
「信じられないでしょう? でも本当なの!」の絶妙さ。
何回聞いても素晴らしい。しかしなんの定理だったのかちっとも覚えていられない自分の脳みそが恨めしい。

さてね、この二幕からのジャーヴィスのあたふたっぷりこそがこの舞台の醍醐味なんだと思うわけですが、
ジルーシャのすべてを知るジャーヴィスの元に届いたのは、
二年目のクリスマス休暇(だったよね?)親友のサリーの家に招かれその素晴らしい家族と交流し、
ハンサムなサリーの兄、ジミーと初めてのダンスを踊ったという報告でした。
青天の霹靂のジャーヴィス。
ジミーとダンスを踊るところを、あなたに見てもらいたかったわ、ってよく考えなくても笑えるな。
たぶん後であの手紙一回は握りつぶしてるよ。苛々して。書棚にも貼られてないはず。
いつまでもジルーシャが自分の手の中で遊んでいると思ったら大間違いだ。
そこから、「ジュリアの魅惑的な叔父様」が颯爽と登場するまでの素早さといったらないです。
動揺しすぎの坊ちゃん。
大きなチョコレートケーキの箱を、どうだと言わんばかりに机の上に投げ置いて、自分アピール半端ない。
大学生の小僧などに負けるか、ってことですか。
大人げない。大人げない!(いいぞもっとやれ)
でも、ジルーシャがロックウィローでの思い出を話し始めると澄ました顔が一気に崩れて、
夢中で子供みたいに話しはじめる。あそこ、本当に少年に戻ったみたいで微笑ましい。
初期の厳めしさも漂う静けさのかけらもないおしゃべりな男。
おまけに財力にもの言わせて、多感な年頃の女の子たちを夢のニューヨークへご招待ですよ。
マジで大人げないな!
そんな真似されたら一発で恋に落ちるわ。
彼はさ、この時点で自分の恋心に気づいていないのか、それとも慈善家としての自分と葛藤しているのか、その辺を膝詰めて問い詰めたいわ。

ジルーシャが読んでいたハムレットの舞台押さえて、
彼女は舞台に夢中で、ジャーヴィスはそのジルーシャの横顔に夢中なんだから堪りませんよ。
そして観客はそのジャーヴィスの表情をガン見(のはず)。あの瞬間の場内、異様だろうな。
そこはさ、ジョン氏(演出家)の指示なの。それとも、井上芳雄さんの演技なの。
どちらにしてもありがとうございます。本当にありがとうございます。
食事の席もちゃっかり隣りキープしてるし、うーん、やっぱり可愛いよね。
サリーどこ行ったー、ってちょっと思ったけど。ちょっとだけね。
あんまり二人の世界だったからさ。
まあ、もう本人に自覚があろうとなかろうと、どうでもいいわという気分にさせられるニューヨーク。

そして巡り来る夏休み。
サリーに招待されて、ジミーやそのお友達もやって来るからと聞かされたジャーヴィスは、完全に嫉妬心のみで、
ダディとしてジルーシャにロックウィロー行きを命じる。
ジルーシャがダディに激しい怒りと不満をぶつけながらも指示に従うんだよね。
で、意地悪な気持ちでこんなこと命じたわけじゃないですよね。
分かってるんです、でも、私サリーと一緒に夏休みを過ごしたかったんです、て。
心の底からこの可愛いジルーシャに伝えたい。

意地悪からだよ! 嫉妬心から、自分のわがまま通したんだよ、あの坊ちゃんは!!

複雑だわ。坊ちゃんの嫉妬はおいしいけど、ジルーシャが泣くと辛い。どうしたらいいんだ。
孤児院という牢獄から連れ出し自由を与えてくれたはずなのに、
また今ここに私を繋ぎ止めるなら、どうして自由を与えたりしたの、って。
それでも、きっとこの指示には意味があるに違いない、って信じようとするジルーシャが健気。
まあ、二ヶ月も手紙を送らなかったり、自分の怒りと不満はきっちりと表現するのがジルーシャのジルーシャらしさだけど。
毎日レターケースにジルーシャからの手紙が来ていないか確認する苛々したり、後悔したりするジャーヴィスを想像。
でも、少なくとも、自分の言うことを聞いてロックウィローに行ってるんだから、って自分を納得させていたはず。

さすがに手紙を受け取って自分の所業に嫌気が差していたようだけど、
この時にはもう、正体を知られて彼女に嫌われるのが怖い、になってるんだよね。
まだ、まだ、正体を明かすのは今じゃなくてもいいと自分に言い聞かせて、ジャーヴィスとしてロックウィローへ。
(この時のダディの手紙を片手で握りつぶすのかっこいい。井上さん、手ぇ大きいな)
一度決めてしまったら、ほんっと全開で楽しそうな坊ちゃん。

「さあ、ここに誰が来たと思う? ぜったいぜったいぜったいぜえええったいに分からないと思うわ」
からの、

「ジャーヴィー坊ちゃん!」

右足踵つけて両手広げての、どやっ! 登場には参りましたとしか。
くっ、なんなの。三十代半ば! かわいいとか……!
東京で見たときには気付かなかったというか、なかったような気がするんだけど、
川べりで水両手ですくって、頬にあててつめたっ! とか。右頬、左頬、両頬って、三回も繰り返したよ坊ちゃん。
なんでそんないきなりピュアッピュア。
はしゃぎすぎだろ。
「私達、毎日冒険しています!」
腹が痛いからやめて。
ジミーとするんだと言っていたすべてを、片っ端からこなしていくジルーシャとジャーヴィス。
ジルーシャがすっかり元気になって楽しそうだからにやにやしつつ許すよ。
スカイヒルという山に登るところ、私が読んだ本はあの人全部読んでいるんですよ、ってジルーシャが尊敬と自慢を交えて言うときに、うお、やばってなってるジャーヴィス。
この人、一幕半分くらいからほんっと表情豊かになって、細かに色んな顔してるから私の目が足りない。

雨が降って、雨宿りして、雲の隙間から月が見えました。
あの下り、一幕であしながぐもを逃したときみたいに彼らの眼前に広がる風景が手に取るように見えて、
なんて綺麗なんだろうって溜息が出てしまう。
その中で、遂にジャーヴィスが気付く。
「月が綺麗ですね」
というあの言葉がどうしても浮かんでしまうんだけど、世界が美しくなるその意味を、あの場面ほど分かりやすく示してくれているものはないようで。
月明かりの中、打たれたように「見つけた。幸せの秘密」と口にするジャーヴィスの、どこか呆然とした声。
この人、愛は妥協だと信じていたとか言うんだよ。
あの呆然とした密やか声に一回目不意打ちで泣いたわ。
もおおおお!!!
二人の二年目の終わり。
ジャーヴィスが、ある少女の傍らでしあわせの秘密を見つける。

三年生。
クリスマス休暇に、今度は上流階級ジュリアの屋敷に招かれたジルーシャの二年ぶりの「最高に嫌な日々」!
ジュリアって、一年生の頃は嫌味ばっかり言って嫌な子だったはずなのに、
ジルーシャのこと着実に好きになっていってるよね。原作ではツンデレ。
ジルーシャが喧嘩もせずになんだかんだ付き合ってるのも賢いと思うわ。
本当の会話が欠片もない人々との交流に心底疲れ果てたジルーシャが、社交界のみなしごよ、と自分をうそぶく。
そこで一度だけ出会ったジャーヴィスの、びっくりするほどの覇気のなさというか、空気感。
気配を殺すようにしている感情のない彼に、最初の頃の姿を思い出す。
初めて、あの世界におけるジャーヴィスのことを知ったジルーシャ。
家族親族に変わり者と囁かれる彼こそが、「社交界のみなしご」なんだと感じて、
あと、彼が心を寄せたらしい娘さんについて非常に非常に気になる時間。
ふられて凹んだんかジャーヴィス……。

ここの場面を見て振り返ると、彼を取り巻いている諦観とか彼の中にこそある静かな孤独とか、
ジルーシャと彼は、対なんだなぁとしみじみ思ってしまう。
どれほど前向きできらきらしていても、孤独が胸の内に添っているジルーシャの感情を、
ジャーヴィスはある部分では非常に共感を持って感じていたんじゃないかな。
でもあの人自分の心の問題については得意じゃないらしいから、それと自分で気付かないまま。

人が違ったようなジャーヴィスに、あの鋭いジルーシャがなにも感じないはずがないんだよ。
だからきっと、ジルーシャはジャーヴィスが抱えていた孤独を感じたんじゃないかな。

まあしかし、今はしあわせの秘密を見つけた坊ちゃんですから!
やってきますよ三度目の夏休み。
ジュリアにパリ、サリーからはアディロンダックスへ誘われたジルーシャ。
だけど、ジルーシャって本当に惑わされないで、自分の進むべき道、立つべき場所、みたいなものをしっかり見つめてる。
ジュリアやサリーと、根本的なところで自分は違うということを忘れてない。
夏休みはバイトをして、自立への一歩を踏み出します!
と宣言したものだから、ここからが舞台でのジャーヴィスとジルーシャのやりとりの真骨頂。
全部のDVD化が無理なら、ここのやりとりだけでも映像化してくれないかな。
辛くなったら何度でも見るわ。

どうしてもパリにジルーシャを呼びたいジャーヴィス。
家庭教師のバイトを譲らないジルーシャ。
売り言葉に買い言葉、そこは坊ちゃんジャーヴィスの堪え性がない。
あっという間に言うことを聞かないジルーシャに切れちゃって、馬鹿で白痴で愚かで浅はかなお嬢さんとか書いちゃう。
子どもか。
プライドの高いジルーシャが従うわけがない。
自分の言うことを聞かないならばと、ダディの名でパリ行きを勧めてみるも、
「ごめんなさいダディ、遅かったわ! もうバイト始めてまーす!」
と満面の笑みを浮かべるジルーシャのきらきらしさ! 痛快!
ここ、ジルーシャもうんと成長して、もうただダディの指示に従うだけの女の子じゃなくなってる。
「私だってパリには心惹かれたわ。ジャーヴィスがあんなにも独裁的な態度でなければね!」
手紙を読みながら、よろれりする坊ちゃんが愛しすぎる。
足下覚束ない感じですよね。腰砕けですよね。自業自得です。
その後、
「ジュッテーム! マッシェーリ! ん~っま!」
やたらフランスナイズされた明るくイラッとする坊ちゃんが登場するわけですが、
この最後の投げキッスがですね、一回目は片手投げ、二回目も片手投げ、
26日三回目のソワレは、両手投げだったと思います。
全身で投げてきた!
イラッ。
「こんなにも素敵で洗練された街が見られないなんて、憐れだねぇ~」
て、かつての魅惑的な叔父様の欠片もないよ。
そのくせまだ諦めてない!
「偶然にも9月の第一週が空いてるから、ロックウィローで会おう。返事は要らない!」
そりゃ、行かないよ。
ジルーシャもむかついて、あの横暴な人が痛い目みればいいんだわ、って苛々してる感じが女の子らしくて可愛い。
ロックウィローで自分がいなくて、がっかりすればいい、ってどこかで願ってる感じ。
この辺、本筋とは関係無いんだけど、ジルーシャが一年生の頃になりたいって言ってた「普通の女の子」なんだと思う。
来ないと知って、黙っていられる坊ちゃんじゃない。
「友達とヨットに乗ることにしたから、君とは会えない」
会えなくたって、自分はぜんっぜん平気だし!
……あの人、お友達とヨットに乗るんですって!
という、痴話喧嘩を延々見せつけられるこの辛……いや、喜びよ。

彼女を振り返らせようとするジャーヴィスの必死さと、
ジルーシャの颯爽と前を見る姿との、だかだかしたやりとりが本当に好きだ。
この男性を容易く手玉にとる感、女性にいいように手玉に取られる感。
真綾さんも井上さんもむっちゃうまいな(笑

あーもー坊ちゃんドつぼじゃん。ばっかでー!
みたいな気持ちになったのも束の間、
ジャーヴィスの言葉も、ダディの言葉も届かない。
自分がなにもかも与えたのにと思いかけて、その思考に打ちのめされる坊ちゃん。
(ここだったかな。ちょっと自信ないけど)
でも、見守って、彼女の望みを叶えるために距離を取ることも愛か、と気付く。
これって、ジルーシャが言っていた「自分よりも相手のことを思う」こと。
ジャーヴィスが初めて、ジルーシャに対して引く。
ジルーシャも成長しているけれど、ジャーヴィスも成長してるよなあ。
でも、いきなり距離を置かれたジルーシャがどう感じるか、にまで手が回らないのは、
彼もまた自分の感情でいっぱいいっぱいなんだなと思えてしまう。
こうして思い出していってると、本当に一年一年が互いの節目になってるんだな。
三年目の終わり。
二人の間にできた距離。

四年生になったジルーシャは、最終学年で有終の美を飾るべく邁進する。
連絡をくれなくなったジャーヴィスの態度に胸を痛めつつ、
夏休みの間に書いて、出版社にこてんぱんにこき下ろされた荒唐無稽な小説ではなく、
自分の知っていることを、自分がいた孤児院を舞台にした小説を書き進める。
ジャーヴィスが言っていた通りに。
彼のことなど気にしていられないものと言いつつ、ジルーシャの中にはもうしっかりジャーヴィスが根付いていて、
事ある毎に彼の言葉が飛び出す。
「彼は私のことをきっと誇りに思うわ」
自分のことを認めて欲しい相手は、もうダディだけじゃないんだって気付いてたのかな。

日々はまたたく間に過ぎて、遂に卒業式。
ダディにここに来てほしい。私と会ってほしい。
「一度でいいから、私のことを誇りに思って!」
の切実さ。泣く。
何度も何度も願って叶えられずに、それでも手紙を書き続けたジルーシャ。
ジュリアの付き添いとして来たジャーヴィスとはぎこちなく会釈を交わしただけ。
ジルーシャ、主席で卒業してるんだよ。総代!
とうとう、彼女のダディ・ロング・レッグズは式には現れず、
引き裂かれた感情のままに「あなたを忘れるわ」と綴った手紙からの、
ジャーヴィスの心情の吐露。
卒業式に彼がダディとして現れることができなかったのって、
自分にはその資格がないと思ってたからだと思うんだけど。
ここで歌われる「チャリティー」という曲の
「簡単だ。与えることの方がずっと、受け取るより」
一方的に与えるだけなら、相手に向かい合う必要もなくて、そこにたとえなんの感情も存在しなくてもできる。
最初に、慈善家ジャーヴィスがジルーシャに大学への扉を開けて見せたように。
でも、受け取ることは、真摯であり、誠実じゃないと無理。相手に対して。
ジルーシャが何気にくれたものの大きさに、自分は見合わないと知ることの絶望ってどんなものだろう。
どれほど対等になりたくても絶対になれなくて、助けて欲しいって相手にこそ願ってしまう。
男の人が泣く姿って嫌いじゃないんだけど、ジャーヴィスの涙は辛い。
彼の姿を見続けてきてしまったから、幸せになって欲しい気持ちが強くなってる。

その救いをくれたのはやっぱりジルーシャで。
書き上げた原稿が売れ、その小切手をダディへ返すことで
施す者と施される者の関係を対等にしてくれる。
あれほど傷ついてダディの存在を忘れると言ったはずなのに、
やっぱり諦めずに前を向くジルーシャの、静かな強さ。
すべてのダディへの借金を返して、本の印税を孤児院に寄付したら、理事になる。
あなたはハゲですか? 教えて下さい、って書いたときから変わらずに、
瞳の色は?
腕を組んで大学を歩きたいわ。
いつかニューヨークに行きましょう。
一度でいいから、
会いたいって、ずっと手を伸ばして焦がれていて、
大人になった彼女は、もう彼からの返事を待たずに、ダディと同じ場所まで歩いていく選択をする。

「そうしたら、あなたは私に会わなくてはなりませんね」

あの時のなんとも言えない、わずかに浮かべた笑みと、気持ちを抑えた声。
なんて綺麗で強い女の人になったんだろうね。

背中を押されたジャーヴィスの決意が片膝ついたプロポーズで、
断られるって微塵も思わなかったんだろう坊ちゃんの気持ちを思うと、うーん。
いや、あのプロポーズは本当にときめくところなんですが。
がっくり肩落としてこの世の闇を一身に纏った感じのジャーヴィスが憐れで。

ここからのジルーシャの告白はもう。
好きで堪らないから、自分の生い立ちを彼に告げる勇気がなくて。
ジルーシャもぼろぼろ泣いてるから、こちらにも容赦なく斬り込まれてくる感じ。
世界が凍りついてしまった彼が、ジルーシャからダディに宛てられた手紙を前に長い時間、
それを手に取ることができなくて立ち止まってしまう。
見てる方はジルーシャぼろぼろ泣いてるし、
「もういいから早く開けて! 早くその手紙読んで!」
て、なってました。
何回見ても、早く! てぎりぎりしてしまう。
相手を思いすぎたジルーシャの本当の気持ちを知ったジャーヴィスが、
書斎でダディ宛ての手紙を胸に押し当て、抱き、ゆっくりと天を仰ぐ。
歓喜の感情に身を任せて、こちらに背を向けて目元を拭うジャーヴィスとか、
席に着きながら涙を払うジャーヴィスとか。
よかったねええええ。

そしてやっとやっとやっっっと!
ジルーシャの願いが叶う日が!!

ここ原作と違うのですが、正直どっちも見てみたいかな。
舞台版のコミカルな感じも凄く好きだし、
原作のこの世の終わりを雨に打たれて体現して肺炎起こす坊ちゃんも見てみたい。
ぼろぼろすぎる坊ちゃん。
いや、まあ、この舞台の流れなら、舞台版のコミカルなやりとりがいいか。

舞台版のなにが好きって、
正体ばらして、
「私のプライベートな手紙読んだの? あなたに宛てたんじゃないわ。彼なら絶対にこんなひどい真似しないわ!」
のジルーシャの怒りに、
「なにもかも君が悪い!」
って、ジャーヴィスが逆ギレするところです。
逆ギレた勢いで、びっくりするような愛の告白までノンストップ。
その後の、なんとも言い難い沈黙。
うあああ言ってしまった……マジでか、こんな言い方。
ないわ。これはないわーやってしまったー……、と、
でかい体半分に折って膝に顔埋めてぐったりする坊ちゃんのつむじの愛しさよ。
やっちまった感凄いです。
あ、ちょーっとフォローできない感じだけど、ま、まあ元気出せよ。
たぶん、きっと、おそらく、うまくいくような気もしないでもないって言うか。
無理かもだけど……って言ってあげたくなる落ち込みっぷり。

ここの逆ギレ怒濤の告白は文字にすると面白さが半減以上なので、割愛しますが。
最初は騙された、と動揺と怒りでいっぱいだったジルーシャが、
ジャーヴィスの言葉に帽子の影で次第に笑顔になっていくの、すごく可愛いくて。

許されようとしていると知ったジャーヴィスが再びジルーシャの手を取り片膝をついたら、
今度は、ジルーシャも同じ場所に両膝をついて彼の両手をとる。
そこでジャーヴィスも両膝をつくんだけど、お互いの目の色を知るその距離と、
「これで許してあげるわ。年寄りじゃなくて、ハゲでもなかったこと」
のチャーミングさ。
最後に、やっと互いを抱き締め合う腕の、ジャーヴィスのどこか恐々とした感じ。
緊張する背を宥めるように叩くジルーシャの手の柔らかさ、それに力を抜いて、
心の底から幸せそうにくしゃっと笑うジャーヴィスと、満ち足りた笑みのジルーシャに、
際限なく幸せな気持ちを貰うラスト。

本当に、あのラストにざわざわとなにかが宿ったんですけど、
ちょっと今ここまで書いて朦朧としてきています。
あれ、おかしいな。
ロックウィローで再びスカイヒルにひとりで上ったジルーシャが、
「彼が居なくて寂しくて。寂しくて少し怖いわ」
て、言ったところ書きたかったのに、どこだったかもう分かんなくなっちゃった。
あの「怖いわ」って、告白も残ったわ。
ジルーシャの愛情表現って思い返せば返すほど豊かで、惜しみない。
ジャーヴィスが言うみたいに、何気なく、さり気なく、無尽蔵にダディに贈られ続けて、ジャーヴィスにもそれは向かっていたんだな-。
あー頭ぼーっとするけど、やっとすっきりした。
ぐるぐる思い出しすぎてちょっとしんどかったので、落ち着いた!
書いたー!

もし、ここまで読んで下さった方がいらっしゃいましたら、
心の底からありがとうございました。

カテコ覚え書きとか、
井上芳雄さんのお見送りびっくり体験とかは、ちょっとまたにします。
書けたら、この続きに。

※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
(ここから3/28追記)

一日経ってみると、ほんまに吐き出した感じですね。
呆れられていないといいんですが。

今日になって思い出した書きたかったこと箇条書き。
思い出すままに徒然なので順不同で。

・「チャリティー」が流れている間の、ジルーシャが窓辺で膝を抱えて顔を埋めている姿の切なさ。
全身で寂しいって言ってる。

・ジャーヴィスのプロポーズがこの上なく直球ストレート。

「君の心が欲しい。僕の心は、既に君のものだ」

ときめかずにいられようか。
これを断ったジルーシャさん(推定22歳)の驚異的な意志と、愛情の深さにおののく。

・26日ソワレで、ジルーシャにパリ行き勧める際に「もちろん僕は行く」って言いながら万年筆落として、
改めて「もちろん僕は行く」(ドヤ)
客席めっちゃウケてたな。

・25日ソワレ カーテンコール
バンドさんを招き入れる際に下手側に向かい両手を伸ばす井上さん。
トランクの上に乗りしばし熱烈に拍手!
しかし真綾ちゃんが「?」と下手を一度覗き、こっちじゃない?と上手側を。
バンドさん登場!
東京と間違えました~と凄く恥ずかしそうな井上さん(かわいい)。
あーあ、て面白そうにからかうように真綾さん。

「いやーもうね、大阪に来たんだなーと。大阪いいところですね」
観客拍手。
「これから各地で同じこと言いますから」
「平日三日間しかないんですが、有給を使って頂いてですね、ぜひ」

・26日マチネ カーテンコール
次があるから、やっぱり短めだったかな。
「大阪三日間しかないので、もうこれで折り返しなんですけど」
CD販促と、あしながおじさん販促。
「CDはまだできていないんですけど」
「これから録るんですよね」
「でも予約はもうできますので」
一度引き上げられた二人が拍手にまた戻ってこられる。
手を繋いで礼!
顔上げた真綾ちゃんがにっこり笑って、大きく手を挙げ
「さよなら!」(お手振り)
隣で井上さんが「え!」て笑ったよね。
さーてなに言おうか、て空気が一瞬あったような気がしたけど、
この真綾ちゃんの勢いで二人ともじゃあ! て感じではけて行かれました。
うん、分かりやすくていいと思いました(笑

・26日ソワレ カーテンコール
「今日の思い出を形にしたいと思われた方には、6月にCDが出ます!」
「まだできていないんですけど、予約できます!」
販促場面で、なんとなく二人ともぎこちなくなる感じがするのが段々楽しくなってきた。
さっきまであんなに舞台圧倒してた二人なのになーと。
なにか言ってらっしゃったんだけど、なんだったかな。

・驚きのお見送り体験
大阪初日。
舞台を見終わり、余韻で高揚した気持ちのままふらふらと会場を出たら、たくさんの人が並んでらっしゃいました。
なんだこれ、と思ったら「お見送りの方はこちらへ!」と。
エスカレーター反対側で、なんとなく皆さんの前を通る気が引けてこそこそと後方へ。
すかさず係員さんにこちらへと促され、挙動不審になりながらそっと並びました。
「あの、お見送りって、これからなにかあるんですか?」
ちょうど隣りに立っていたお姉さんに聞いてみた。
「私もよく分からないんですけど。お見送りって言ってたので、役者さんを皆で見送るのかと思って」
同じこと思ってる人がいた!
話しやすい人だったので、そのままこそこそと舞台素敵でしたね~、などと話す。
お姉さんは真綾ちゃんのファンらしい。
「お見送りできるなんて、ちょっと贅沢で嬉しいですよね」
「さっきから井上さんのお見送りって係の人が言ってるけど、真綾ちゃんはいらっしゃらないんですかね」

想像していたのは、宝塚とかの入待ち出待ち?
役者さんが颯爽と、見送り列を作っている私達の前を横切って去っていく。
拍手などしてありがとうを伝える場だと勝手に思っていたので、わーこんなん初めてー。
見送るよ。拍手喝采で見送るよ! と、へらへらして待ってたんですよ。

本当に、ごめんなさい。
係の方が言っていたように、出てこられたのは井上芳雄さん。
ふらっと現れて、一番先頭の方から握手!
「え」
「握手してますよ」
私とおねーさん、拍手体制だった。
胸元で止まる両手。
「この列、流れていってますよね」
「まさか、ここにいる全員と握手?」
「え? こんなに人いるのに? でも、このままいくとそんな感じですね?」
「これ、私達並んでて大丈夫なんですかね」
「ファンの方達じゃないですか、この列」

動揺している間にもぐんぐん進む列。
だって、あなた今そこで舞台終えたばっかりでしょ?
ここに並んだひとりひとりと握手って、え、本当に?

抜けようかとも思ったけど、もう、誘惑に勝てませんでしたわ。
直接ありがとうございました、なんて一生言う機会ないかもしれないし、と握手して頂いてきました。
ご本人そこにいらっしゃると、本当に本物だ! と馬鹿みたいに思うしかないですね。
ありがとうございました、て言うだけで精一杯。
でもなんか、すごい腰の低い兄ちゃん、て感じでもあったな。
悪い意味じゃなくて。
舞台上の発言はちょいちょい黒い感じなのに、ギャップ?(笑
手が、なんて言えばいいのか、ふにゃっとあたたかったです。

「……あれ、毎回されてるんですかね」
「びっくりしたけど嬉しかったですね」
どこか呆然とした気持ちで帰宅の途につきました。
お疲れでしょうに、本当にありがとうございました。
今まで舞台観に行ってもすぐに帰ってたから、私が知らなかっただけで、よくあることなのかな。
いやでも本当に驚いたし、色んな意味で頭が下がりました。プロって凄い。
初めての衝撃のお見送り体験でした。

さて、ダディ・ロング・レッグズはあと、
3月31日 福岡公演
4月4日~6日 名古屋 中日劇場公演
を残すのみ。

私も人からお勧めされて足を運び、こんなにも胸躍る舞台に出会わせて貰いましたので、
ほんの少しでもこの楽しさが伝わればいいなと書きました。
どれほど文字にしてみても、舞台のあの空気や迫力、感動は半分もお伝えできないような気がします。
でも、なにかのきっかけになれたら嬉しいなと思いつつ。

長々とお付き合いくださり、ありがとうございました。

コメント

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    朔さん、こんばんは!
    最初から最後まで、じっくり読ませていただきました。
    読みながら舞台の二人が鮮やかに思い出されて、
    なんだかもう1回舞台を観たような気持ちになりました。
    ありがとうございました。
    二人が対、というくだり、私も同じようなことを感じていました。
    あああ、ほんとに隅から隅まで直に語り合いたい!
    今度お会いできたときに、是非お話しましょうね。
    ・・・って、かなりタイムラグがありますが(笑)。
    続き(びっくり体験って?!)も楽しみにしておりますねv

  2. SECRET: 0
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    恭穂さん>こんばんは!
    最後まで読んで下さってありがとうございます。
    思い出していたら色々溢れて止まらなくなってしまって。
    見終わった直後に存分に語る相手がいなかったので、余計に自分の内に蓄積されてぐるぐるしてしまったのかもしれません。
    隅から隅まで、語りましょうぞ!(笑
    びっくり体験、本当にびっくりしました!!

  3. SECRET: 0
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    はじめまして。
    チラシを見て何となく気になっていたこの舞台。朔さんの3/12のブログがきっかけで観に行く決心が付き、4月6日の名古屋公演に行ってきました。楽しかったです。行って良かった。
    大学に入りたての頃は、周りの女の子たちと違う自分に戸惑い、無知を嘆きながらも、知識を渇望し、どんどん魅力的な女性になっていくジルーシャから目が離せませんでした。
    3年生の夏休み、パリ行の誘いを断り、バイトを始めるジルーシャと、それを止めさせようとするジャーヴィスのやり取りが面白かったですね!私もここのやり取りをもう一回見たいです。「ジュッテーム!」のところは両手だったと思います笑。自分のやりたいことに邁進するジルーシャの方が一枚上手でした。学校を卒業したジルーシャが孤児院の理事になって、ダディに自分から自分の力で会おうとする彼女は、入学した頃と比べると随分と強く逞しくなりました。ジャーヴィスは彼女から与えてもらってばかりで、自分はお金しか与えていないと唖然としますが、彼女にはそれで十分だったのではないかなと思います。大学の費用の工面は彼女一人の力ではできないことでしたし、ジャーヴィスが背中を押したことで、彼女の才能が開花した。教育の機会というジルーシャにとってかけがえのないものをジャーヴィスは与えられていたと思います。
    最後のお互いに膝をつき、目線を合わせ、微笑み合いながら口づけをするシーンは温かく幸せな気持ちになりました。
    名古屋でも公演後、井上さんがお客さんに握手してくれました。私も握手してもらったのですが、固いと思いきや柔らかい手で驚きました。
    朔さんのこちらの記事をみるとジャーヴィスが何だか愛らしく思えます。色んなシーンが思い出され、楽しく拝見しています。ありがとうございます。

  4. SECRET: 0
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    とってぃ様>はじめまして。
    本当に楽しい舞台でしたよね! ブログをきっかけにして下さったとのこと。凄く嬉しいです。
    4月6日の公演、私も行きました! 同じ場所で、同じ公演を観たんですね(*´▽`*)

    ジルーシャの生き生きと動く様には目を奪われっぱなしですよね。
    パリ行きの際のやりとり、「ジルーシャ! マシェーリ!」からの投げキスで、普通に愛しい人って言ってるわ、と笑ってしまいました。両手でしたね(笑)
    ジルーシャが、ダディに小切手を送る際に
    「あなたからはお金以上のものを十分に頂きました」って、伝えますよね。
    とってぃさんが仰るように、ジャーヴィスは自分はお金を与えただけだと嘆くけど、その環境とチャンスを活かす機会を与えたことそのことは、やっぱり凄いことだなと思いました。ジルーシャが完全に、余すところ無くそのチャンスをモノにしましたしね!
    何度観ても幸せな気持ちにしてくれる舞台だなと、改めて感じました。
    この日のジャーヴィスは今まで以上にテンション高かったような気もします。

    井上さんの手、想像以上に柔らかかったですよね(笑
    私もちょっとびっくりしました。
    長々と書いた感想文を読んで下さってありがとうございます。
    こうしてとってぃさんの感想も聞かせて頂けて、舞台が終わってしまってからも楽しいなあと嬉しくなっています。
    またお互いに良いものに出会いたいですね!
    お勧めがありましたら、是非お聞かせ下さい。
    書き込みありがとうございました。

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