ミス・サイゴン
友人がチケットを取ってくれたので、初めて観に行きました。
なんか有名なやつ、という程度の認識で、いざ観に行くとなってさらりと予習したんですが、
これ、ある程度気力がないとしんどいだろうなと。
ベトナム戦争末期のサイゴンで出会った少女とアメリカ兵の恋。
この設定だけで既に「ああ……」と、まだ何物も知らないにも関わらず、暗雲しか予感できない。
観終わった後、元気でいられるかなーと思いつつ。
全然ミス・サイゴンとは関係ないんですが、
実写版守り人シリーズのキャストについて、この友人が
タンダはNHK朝ドラ「花子とアン」に出ている朝市がいいんじゃないかと言ってまして、
この人天才か! と思いました。
もう、私は花子とアンに出てくる男性陣の中で朝市がダントツに好きなんですが、
タンダね! いいと思う!
バルサが綾瀬はるかちゃんだと思うと、窪田くん(朝市)くらい甘いマスクでもいいと思うよ!
ものすごくテンションあがった。
アニメ版タンダもなんだかんだとイケメンだったしな。
早くキャスト発表されないかな。
楽しみで仕方ないです。
その朝市はどうやらスピンオフが放映されるとかで、
でもうちBSないのにどうしたらいいんですか。
スピンオフはBSとか、鬼ですか。
とにかく朝市に似合いの素敵なお嫁さんでありますように。
気持ちが色々と忙しいわ。
↓
やっと本題。
ネタバレありまくり感想です。
非常に簡単なあらすじ。
ベトナム戦争末期。
村ごと焼かれて両親を亡くしたキム(17歳)は生きるためにサイゴンに出、
エンジニアという男のキャバレーでアメリカ兵クリスと出会い恋に落ちる。
しかし、サイゴン陥落の混乱の最中、クリスはアメリカに帰国。
二人は引き裂かれてしまう。
三年の月日が流れ、クリスは止む終えず置いてきてしまったキムを忘れられず、
悪夢に苛まされながらも新しい人生を開こうと、エレンと結婚。
一方キムは、クリスとの間にできていた子タムを生み落とし、
キャバレーの主人であったエンジニアの知恵でバンコクへ脱出し、
クリスの迎えが来る日を夢見て生きていた。
クリスは戦友ジョンからの知らせでキムのことを知り、また自分の息子の存在を知る。
妻エレンにすべてを話し、バンコクへやって来る夫妻。
キムはクリスが迎えに来たと思いホテルへ向かい、エレンと会ってしまう。
真実を知り慄くキムは、自身の息子であるタムの幸せを願い、
タムだけはクリスたちに引き取ってもらえるよう願う。
遂にクリスと再会するその日、タムの背を押しクリスたちのもとへと促したキムは、
かつてクリスから身を守るようにと渡された銃で自身を撃ち抜き、クリスの腕の中で微笑みながら目を閉じた。
幕。
…………。
ええええええええええええ!
納得がいかーん!!!!!!
というのが、直後の感想でした。
これ、気持ちの持って行き場がどこにもないよ。
幸せな結末になるとは思っていなかったけど、思ってはいなかったけど、でもさ!
ここまで来て死ぬか……。
そうか、死が選択肢の中にあったのか。
というか、むしろあの状況の中でその選択一択しかなかったのか。
とかなんとか、さんざんぐるぐるして嫌な気持ちだわ、と思いながら家路についたわけですが。
つらつら考えていくと、キムの行動は非常にロミオとジュリエットに通じる部分があるような気がして、
それでやっとなんとか自分に分かりやすい理解をしてみました。
クリスと出会ったのが17歳。
店に出て初めての客がやさしく良い人で、一気に恋に落ちて、一緒にアメリカに行くところまで決まっていて。
運悪く引き裂かれて、三年。
それでも彼女まだ20歳かそこらだもんな。
授かった子供を懸命に育てながら、クリスが迎えに来てくれることを一途に信じて、疑いもせずに待っている。
あの純粋さと一途さって、あの特殊な環境での出会いと、年齢だったからこそなのかなと。
それこそ最初の店で共に働き、肌を晒し、客を取り、米兵と恋仲になりビザを融通してもらおうとしていた同僚たちなら、
あそこまでの一途さでは待っていなかったかもしれない。
途中、戦時中はベトコンとして活動して戦後郡部のお偉いさんになったらしい、親同士が決めた許嫁のトゥイがキムを探しにやって来るんだけど、
もう少し世間知と生きていくための計算や打算があれば、キムはトゥイの手を取ってただろうしな。
その手を完全に拒絶したキムから感じたのは潔癖さで、
キムがもう少し年齢重ねてたらトゥイという人への接し方も違ったものになったんじゃないかなあと
見終わってから何度でも思ってしまう。
そもそもトゥイという人物の描かれ方が、クリスとの対比のせいかキムにとっては幸せを脅かす存在、みたいな印象になりがちで、
もう少し別の視点から見ると、幼馴染みとしてキムのことをいつか嫁にするんだと純粋に思ってきたのに、
国のために村を出てる隙に幼馴染みがサイゴンのキャバレーでアメリカ兵とくっついてたってことで、トゥイ的に相当厳しい現実だった気がする。
ちょっとキムのこと追っかけすぎて、狂信的なストーカーみたいに見えたのがやっぱり敗因だったな。
本当に恐かったもんね。
友人からは、予め、駄目な男の人がいっぱい出てくる話だよ、とは聞いていました。
キムをぐいぐい追ってくる幼馴染みのトゥイ。
アメリカンドリーム、一攫千金を狙い、夢を追うためならばなんでもする、強かで抜け目のないエンジニア。
それから、ベトナム戦争の現実に打ちのめされていた、クリス。
クリスは本当に駄目だな……とは思ったんですけど、
あの人、ああするしか生きていく術を見つけられなかったんだ、とか
クリスは仕方ないわ、という心境に至った自分に、
さようなら十代の潔癖で純な感情よ、という心持ちになりました。
十代やら二十代前半で見てたら、きっとクリスに対しては
「キムを裏切りやがってあの男……!」
と、とりあえずは思ったはず。
キムとその息子タムの存在を知らされてからそれなりに悩むんですが、最終的には、
人生やり直すために一緒になった妻エレンと、
「キムとタムには暮らしに困らぬよう資金援助しよう。賢いキムならきっと分かってくれるはず」
と結論付けるんですよ。
ここもね、
「なにを人を舐めくさったこと言うとるんじゃ!! キムの気持ち考えろ!!!!」
机に両手を打ち付けつつ激怒したと思います。
いや、あのセリフが飛び出てきたときに込み上げてきた怒りは本物。
でもしかし、最後、自殺したキムを抱いて絶叫するクリスを見ながら、
「ああ……この人はこの選択肢しか持てなかったんだ。仕方ない。クリスは仕方がないわ」
という心境に至りました。
最初は自分とクリスの間にも子供が欲しいから、タムは引き取ることができない、って言ってた奥さんのエレンが、
最後にはタムをしっかりと抱き締めて、セリフも何もないのに覚悟決めて受け入れようとしてるのをひしひしと感じた。
その裏で、クリスはキムの亡骸抱き締めて絶望の淵で絶叫してるんだもんなぁ。
キムの選択には全然納得いかないんだけど、
これでキムはクリスの気持ちと、タムをアメリカで生活させるという自身の目的は達してしまったわけだから、
その辺も胸がもやもやとしました。
誰も幸せにしない力業で持っていった感。
今も、あれがベストな幕だったのかとずっともやもやしている。
あれから色々考え続け、現在は、ベトナム戦争から帰還したクリスを支え続けた妻エレンさんの女としての強さと、
クリスとタムと暮らす今後の彼女が抱えていくだろう痛みを想像してしまって、エレン頑張れ。マジ頑張れ、という気持ちになってます。
クリスはもう悪夢にうなされながら生きていくしかないんだ、あの人。
エンジニアという男、もともとは市村さんが演じられる予定だったそうですが、
ご病気で降板。私が観劇したのは筧さんエンジニアでした。
舞台で筧さん初めて見たと思いますが、エンジニアという癖のある役所だけではなくて、
そこはかとなく動きが変で、次はなにするんだろうと目が離せない存在でした。
なにをしてでも生きる、という気持ちがぎらぎらしていて、エンジニアの人間としての欲の力が客席にもねっとり押し寄せてくる感じ。
最後、彼のアメリカン・ドリームを朗々と歌い上げるところなんかは、圧倒。
そう言えば舞台の年齢レーティングってどうなってるんだろう。
冒頭のキャバレーシーンは割と刺激の強い構成で、
舞台上のそこここでビキニ姿のおねーさん方と米兵たちが様々な姿勢で契ってたりおしゃぶりしてたりするので、
視界に入った子供達の後頭部を見ながら、勝手に私が緊張してしまった。
この舞台で文句なく和みの存在だったのは、キムの息子タム。
一言も言葉を発さないんだけど、お人形さんみたいにかわいい。
キムに抱っこされるときにはひしと抱きつき、エンジニアが荷物のように小脇に抱える際にはより無表情に。
最後の最後まで笑わずに、でもキムの生活に寄り添うような日常が想像できる佇まいだった。
そうそう、最後、タムを手放そうと決心したキムは、タムにアメリカの少年ぽい格好、トレーナー、半ズボン、靴下にスニーカーをさせて送り出してた。
そのトレーナーに描かれていたのはぱちもんのミッキーさんなんだって。
忘れないでねと抱き締め、彼女が描くアメリカの少年の格好をさせた息子を送り出したキムは、
もうタムの幸せの他はなにひとつ望んでいなかったのかもしれないな。
うーん。
考えれば考えるほどもやもやしつつ。
コメント
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朔さん、こんばんは。
そんなにもやもやしてたんですね(笑)。
いや、私も全然納得は行かないのですが、初演から観ている分、
別の楽しみ方を見つけているというか・・・
最後はもうほんとにキムの力技ですよね。
他に方法はなかったのか、と見るたびに思います。
終演後、もっといろいろつっこんで話してたら、
もやもやが1個くらい減ってたかしら?(笑)
今度ご一緒するときは、後味のいい舞台にしましょうねv
でもって、やっぱり朝市くん(窪田くん)のタンダ、いいですよね!
今日の「花子とアン」を観て、更に強くそう思いました。
N○Kさんに投書とかしてみようかしら・・・?(笑)
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恭穂さん>こんばんは!
思った以上にもやもやしていたみたいです(笑
こうしてもやもやするのもなにかを見たり読んだりすることの醍醐味だと思いますし、観て良かったなと思いましたよ!
お誘い下さりありがとうございました(*´▽`*)
観劇後元気いっぱい!となる舞台って、今年ならシスター・アクトとかですかね。あれもまた観たいな。
窪田君、本当にいい味出してますよね。
朝市という一途な役どころも勝手に投影しちゃうんでしょうか。
タンダも静かに静かにバルサ一筋ですよねv